『扉』 / エレファントカシマシ

このアルバムは『5』とかに雰囲気が似ているような気がするのだが、とにかく手放しで褒めちぎっちゃいたいような完成度。前作『俺の道』は明らかに過渡期を感じたし、エレカシもここまでなのか?と思っていたんだが、そこから1年も経たないうちによくこんなアルバムを作ったものだ。最近じゃすっかりエレカシ聴かなくなったよなぁ、なんていうエピック時代のファンこそ聴くべきだ。


まず、1曲目の「歴史」がすごい。永井荷風の次は森鴎外だ。全国のエレカシファンの多くがアルバム発売直後から森鴎外作品を読みふけったに違いない。勿論、俺も読んだ。
静かに始まり、Bメロで扉から光が差し込み、サビで開け放たれる。
そしてなんといっても「地元の朝」。40を間近に控えた男が実家に帰って両親に会ってきたというなんとも辛気臭い話を8分以上もの大作に仕上げている。明らかにエレカシファン以外には受け入れてもらえそうにない。しかし、この辛気臭さがまたエレファントカシマシ。真骨頂だ、真骨頂。帰ってきたぜ(何が?)。
ラストの「パワー・イン・ザ・ワールド」はツアータイトルにもなっているが、一番前作に近い曲で、今作がこういう曲ばかりだったら本当にもうネタ切れなんだなと思っていたと思う。しかし、そうはならなかったし、この曲と前述の曲、そして「ディンドン」なんていうわけのわからん曲も一緒に入れてしまったところにある種の開き直りのようなものすら感じる。
諦念と開き直りと少しの浪漫と。やっぱり帰ってきただろ、セルフプロデュースでもあるし!


アルバムを通してベースがデカくていい。
森鴎外が輝きを増したのと同じく、宮本、そしてエレファントカシマシもここから輝きを増していくのではないか。いぶし銀ってやつですよ。でも、輝いちゃってるのは確実に似合わない。エレカシは地味であるべきだ。そうだ。
しかし発売からもう3ヶ月ぐらい経っているのになぜ俺はこんなに熱く語っているのか。それは恒例の野音が迫ってきているからです!


追記
ところでCD-EXTRA仕様のこのアルバム、CD-EXTRA部分のデータが見当たらないのは俺だけでしょうか.......。前々から気になってたんだけど。